7.日韓海底トンネル構想の長期的推進
ドーバー海峡をつなぐ英仏海底トンネルは、英仏間の人的流れと物流の拡大は勿論のこと、島国である英国とヨーロッパ大陸全体をつなげる役割を果たしている。北九州地域と釜山・馬山地域をつなげる日韓海底トンネルの建設は、日韓間の人的流れと物流の拡大に貢献するのみならず、島国である日本とアジア大陸全体をつなげるプロジェクトとなるはずである。日韓の大衆交流の現象や日韓中の三カ国交流の展望からもこの計画がもつ経済外的な「相互交流効果」を高く評価しなければならない。
また、日韓海底トンネルは日韓両国のみのものではない。それが北朝鮮を通過し、中国東北地域の瀋陽までつながるのであれば、日韓中三カ国の北東アジア鉄道網がつながりシベリア鉄道を経由しヨーロッパまで到達できる。
日韓海底トンネルに関して、かつては竹下登元首相が検討を指示した経緯がある。羽田孜元首相も「日本再生プログラム」の一環としてこの構想に関し言及した。森喜朗元首相は、2000年10月のASEM会議で、日本と韓国をつなぐトンネルを作りASEM鉄道という名前を付けようと提案した。また、総理大臣に就任する前の菅直人議員は「日韓海底トンネルにリニアモーターカーを走らせる」と構想に関し言明したことがある。韓国でも、1990年に盧泰愚大統領が訪日時の国会演説において海底トンネルに言及し、海部首相に建設を提議したことがあり、1999年9月には金大中大統領も「日韓トンネルが建設されれば、北海道からヨーロッパまで結ばれるので、未来の夢として考えてみる問題」と、トンネル建設を提唱した。2003年2月には、盧武鉉大統領が日韓首脳会談でトンネル建設を提案したことがある。
海底トンネルの建設は、巨額の金融支援と先進的なトンネル技術を必要とする長期的な未来志向プロジェクトである。日韓両国政府のイニシアティブにより、トンネル建設のための総合的な共同研究を組織して、経済的、技術的な妥当性はもちろん、東アジア安全保障や地域統合に与える効果等を体系的に研究しなければならない。技術的な建設可能性・ルート設定、旅客・コンテナ・自動車流通による物流輸送体制の変容、建設コスト・償還計画などに関して検討することだけでも、このような分野で日韓の人的、経済的、技術的交流が著しく活発化するはずである。このような共同研究を踏まえて、両国指導者は国民の十分な同意を得る方法で、トンネル建設プロジェクトを推進することが望ましい。
(以上:日韓新時代共同プロジェクト「日韓新時代のための提言」PP.14-15抜粋)
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