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【資料名】 李建培(韓国海外技術公社常務): 日韓トンネルプロジェクト構想とその推進現況, エンジニアリング,No.125,PP.36-48 , 韓国エンジニアリング振興協会 , 1994.1.1. 

日韓トンネルプロジェクト構想とその推進現況


日韓トンネルは、国際ハイウェイプロジェクトの中でも最も難工事が予想される部分で、日本の九州北部から壱岐島と対馬を経由し、韓国の巨済島あるいは釜山に至る約230Kmのルートを、海底トンネルや橋梁で繋ぐ計画である。

序言

 1993年8月26日付けの朝鮮日報の第1面に「海底トンネルの推進ー韓日協力委員会で合意」という見出しの中で、その前日、日本で開かれた第31回韓日協力委員会(韓国側委員長:申鉉鎬)において、双方が日本列島と韓半島を結ぶ海底トンネルの計画に関する共同研究などの実践的なプログラムを開発するための実務委員会を設置することに合意するなど、5項目の共同声明を採択したとの報道があった。また3年前の1990年5月、盧前大統領が訪日した際、日本の国会演説でも「変化する世界の中の新たな日韓関係」という主題の中で、東北アジアでの共同体関係の発展のために、日韓間の海底トンネルを通じての日本と韓半島そして北京、ヨーロッパに至る友情旅行の実現に期待すると言及してもいる。
 しかし日韓トンネルプロジェクトは、それよりはるかに遡った1981年11月、ソウルで開催され、世界の109カ国、770名の著名な科学者や学者が参加した「第10回科学の統一に関する国際会議」で提唱された国際ハイウェイ建設がその発端と言える。そのとき提示された国際ハイウェイ構想は、日本から韓国を経て中国に至るアジアハイウェイ計画であり、その東側の関門とも言える日韓間の海底トンネルが浮上したものである。特にその当時日本は、自国の技術と経済力に自信を深めており、孤立した島国から大陸へと陸路で確実に結ぶという願ってもない着想であったため、それに対し積極的に呼応することにし、1982年4月、民間レベルの国際ハイウェイ建設事業団が設立され、続く1983年5月にいわゆる「日韓トンネル研究会」を発足させた。それ以後10年余りの間、この2つの組織が主体となって、日韓トンネルのルートとそれに沿った地形・地質調査および工法研究活動に約100億円を投入してきた。またこの間、韓国側でも1986年10月「国際ハイウェイ研究会」(会長:尹世元)、1992年3月「韓日トンネル技術研究会」(会長:成百詮)が設立され、日本側との技術交流を行なっている。

国際ハイウェイと日韓トンネル構想

 国際ハイウェイプロジェクトとは、ユーラシア大陸を東西の高速流通システムで結び、それをさらにアフリカ大陸や南北アメリカ大陸まで延長し、全世界を一つの交通体系で網羅しようという壮大な構想である。その第1次案として、東京~ソウル~北京を結ぶアジアハイウェイが提案されている。この国際ハイウェイの実現で、世界の全ての国々を結ぶことにより、人的・物的さらに情報の流れが円滑になり、地域間の経済活動と技術の平準化を促進し、平和と繁栄を達成しようとするものである。
国際ハイウェイは単に高速道路だけではなく、超高速鉄道やリニアモーターカー、高速物流システム、通信ネットワークなどを併設し、また空港や港湾を隣接させた総合的な交通システムである。
その基本構想では、国際ハイウェイの両側の幅約1Kmを自由地帯とし、国境を超越した地域とするというものである。そこでは国籍に関係なく誰でも消費者として立ち入ることができ、人種や民族を越えて自由な交流が可能になる。そのためハイウェイの沿線には、国際会議場やホテル、娯楽施設などが建設され、またこの自由地帯には環境保全のためのグリーンベルトが施されるものとする。
日韓トンネルは国際ハイウェイプロジェクトの中でも最も難工事が予想される部分で、日本の九州北部から壱岐島と対馬を経て、韓国の巨済島あるいは釜山に至る230Kmのルートを、海底トンネルや橋梁で結ぶ計画である。これは総延長がユーロトンネル(50Km)や青函トンネル(日本の北部と北海道間の54Km)の実に4倍に達する世紀的な巨大プロジェクトとなるものであり、このト
ンネルは日本における大陸への重要な関門になるものである。

各国の推進組織と活動
 前述したように、日本はすでに80年代に海底部が38Kmに達する青函トンネルと、本四(本州~四国間)連絡橋をなし遂げたという進んだ技術力と世界第1の経済力を土台に、これらのプロジェクトに関係していた多くの専門技術者が集まり、1983年に「日韓トンネル研究会」を設立し、過去10年余りの間、調査活動を実施している。中国も日本側の技術と資金の支援を受けて、1989年に「京丹国際高速公路計画準備委員会」を発足させ、北京~丹東間850Kmのハイウェイ建設のための基礎調査活動を進行させている。
我が国でも1986年に「国際ハイウェイ研究会」そして1992年に「韓日トンネル技術研究会」が発足し、中国と共に日本側と相互に技術および人的交流を行なっている。各国の推進組織と活動状況を紹介する。

1)日本
 国際ハイウェイ・日韓トンネルプロジェクトを推進する日本の民間組織としては「国際ハイウェイ建設事業団」、「日韓トンネル研究会」、および「 亜細亜技術協力会・日韓トンネル委員会」など
がある。 国際ハイウェイ建設事業団は、国際ハイウェイプロジェクトを主導し総括する民間組織で、このプロジェクトに関する調査、研究開発、計画、施工および管理などの業務を基本事業とする諮問機関である日韓トンネル研究会に運用資金を支援し、トンネル調査の現場の実務業務を遂行しており、その機構は次のようになっている(図参照)。
日韓トンネル研究会は、日韓トンネル計画に関する調査・研究およびその受託、内外の情報資料の収集、講演会の開催、国際交流、刊行物の出版および広報活動などの諸事業を行なっている。
同研究会は設立後1991年までは4つの調査研究会で運用されてきた。(理念経済部会では)プロジェクト構想における日韓トンネル建設の意義と理念の構築、および関連地域開発と社会的・経済的インパクトなどの問題点を提起した。地形地質部会では各予定ルートの地質条件の把握と問題点の研究、設計施工部会では各種の建設工法の比較検討と設計概念の研究を、そして気象海象部会では海域における気象・海象条件の把握と環境影響の調査・研究活動を行ってきた。
そして1991年6月に、新しい国際・社会および経済的諸条件に対応するため、図示したような組織改編が行なわれた。とくに技術委員会の総括部会では、過去10年間の調査の総括と問題点の整理・確認と施工法の検討業務を担当し、建設計画部会では、21世紀の交通体系、施工技術の研究、通信ネットワーク、情報利用システム、エネルギー利用方法そして輸送供給処理方法に関する調査・
研究活動を行っている。
同研究会は法人会員が200社に、個人会員も約1000名に達しており、理事・顧問・参与など役員だけでも130名余りに達し、九州地域の地方自治県と地方議会の議員はもちろん、中央の衆・参議員らの積極的な後援と賛助を受けており、遠からずこのトンネルプロジェクトを国家プロジェクトとして浮上させようと推進中である。
日本側は日韓トンネルの実現のため、1982年から陸上と海域で地質調査と環境調査を開始し、予定ルートについての概略地質調査のため、1986年から九州の佐賀県のトンネルの始点予定地で調査斜坑の掘削が始まり現在410mの長さに達している。
この間、日本側でなされてきた調査や研究成果などについては、後でもう少し詳細に紹介することにする。

2)韓国
 我が国では1986年10月、国際ハイウェイ構想に関心を持つ地質学専攻の教授らが集まって「韓国国際ハイウェイ研究会」(会長:尹世元)を設立し、日本側の研究会と交流を続け、1988年10月から12月にかけて巨済島での陸上ボーリングによる地質調査を日韓共同で実施したことがある。
1991年始めには、国内の建設エンジニアリング関連の産・学・研各機関の重鎮、土木・土質の専門家の一団が、「日韓トンネル研究会」側の招請を受けて同研究会の東京総会と技術懇談会に参加し、また九州の唐津の試験斜坑を踏査した。これを契機として、日本側の調査・研究の成果と国際ハイウェイ構想に対応することになり、このトンネルプロジェクトの技術情報の入手と研究活動を目的に、1993年3月に道路とトンネルおよび土質の専門家などで構成された「韓日トンネル技術研究会」(会長:成百詮)が発足した。
同研究会は、これまで日本で開催された国際シンポジウムに参加し、我が国の中長期交通網構想と課題などに関して発表した。また今年11月には国際技術交流会をソウルで開催し、政府機関を含めた各界の専門技術人達とトンネルプロジェクトに関する技術交流を行ないながら課題を把握し、我が国側の対応方法の研究などに力を入れている。

3)中国
 中国は1988年、前述した日本の国際ハイウェイ建設事業団側が作成した調査報告書「華北横断高速道路の経済検討」に立脚して、1989年4月「京丹国際高速公路計画準備委員会」が設立された。日本側の技術と、北京側と丹東(安東)間の約850Kmの高速道路に関する1次・2次予備調査を経て、1993年7月からは事業の妥当性調査に着手し、現在その調査作業が進められている。
 この「京丹高速道路計画委員会」は、中国交通部の前・現職の高級技術人と有識者、それに「中国国際友好連絡会」、またその他に、遼寧省、河北省、北京市、天津市など関連地域の地方政府機関の関係者などが関与している。中国政府は今年(1993年)5月、このプロジェクトを10大工事のひとつとして指定し、2000年までにこの道路の開通を目標に推進している。


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以下、翻訳は省略するが、次の項目についてB5判8ページ分にわたり、技術的側面から図表入り
で詳細に説明している。


■日韓トンネル計画の概要
1)ルート案の設定
 1-1 平面線形
 1-2 縦断線形
  2)トンネル断面の設定
  3)工期の検討
  4)トンネル運用方式の想定

■代表的な計画案の概略比較検討
 1)道路トンネル計画
 2)第3部会長案
 3)持田案
 4)第2部会案
 5)沈埋トンネル計画
 6)沈設(水中)トンネル計画
 7)九州呼子-壱岐間の橋梁計画

■計画上の問題点と今後の課題
 (1)地質上の問題点
 (2)施工上の問題点
 (3)工期上の問題
 (4)その他の問題


訳責:特定非営利活動法人 日韓トンネル研究会事務局

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